理想ではなく勝利を目指すために考える「恐竜」の構築論
昨今のリミットレギュレーションにおける規制緩和により頭角を現している恐竜デッキ。
マスターデュエルでは依然「魂喰いオヴィラプター」が準制限ですが、OCGとの環境の違いによるメリットなどもあり、強力な制圧盤面をつくれることで知られています。
しかし、ただの先攻制圧だけのデッキと誤解されている節がある気がするので、構築する上でのポイントをひととおり解説します。
デッキコンセプト
「珠玉獣-アルゴザウルス」で「ベビケラサウルス」「プチラノドン」(通称、卵)を破壊することで、シンクロ・エクシーズ・リンクモンスターを展開しながら、「究極進化薬」の発動条件を整える構築が主流です。
よって、強力な盤面の展開には2枚以上の組み合わせが必要であるため、いわゆる1枚初動のデッキと比べてやや事故率は高いです。しかし、それでも高い安定性を持つのは豊富なサーチと「幻創のミセラサウルス」のおかげといえます。ミセラは展開の中核を担いながら、フィールド上の恐竜を守る効果も併せ持つため、幅広く相手の妨害を無力化できるのです。
そんなわけで目指す初動は
+ or
+ or
+ or
の6種類に「化石調査」を加えたもので、なるべくミセラを握った状態で始めるのが理想といえます。(オヴィ+プチラでもいけないことはないですが質がやや落ちます。)
基本展開
上述のどの組み合わせでも、ミセラ効果、卵効果、通常召喚で3体が並びます。
進化薬の発動条件を満たせるようにリンクリボーは必ず出しましょう。
※アルゴ通常召喚から入った場合は、卵を破壊してオヴィ特殊召喚、ミセラサーチ→リンクリボーを出してからミセラで卵を出して、墓地の卵を除外しないようにします。
オヴィ効果で卵を破壊して卵を特殊召喚。卵効果でラプター特殊召喚。
破壊した卵をそのまま蘇生してしまうと卵の効果が発動しないので、必ず別の卵を蘇生してください。なお、マスターデュエルでは右側に表示されるのが墓地の下(蘇生する方)です。慣れないうちはベビケラとプチラで分けたり、レアリティを変えて見分けをつけるとよいかもしれません。
さて、ここからが本題です。
残った卵で何を出すか
ここからの流れは、ラプターで卵を破壊→卵を発動してから「スクラップ・ワイバーン」を出すのが定石です。その上で、卵で出したモンスターをどう活かすか見据えなければいけない場面でもあります。
主な候補として、ワイバーンで破壊しても損失のない卵、次のターンのリソースになるミセラ、あるいは進化薬の除外から展開を伸ばせる「ジャイアント・レックス」が挙げられます。
そして、結論から先に述べると、私はミセラを出すことを推奨します。
ニビルをケアするか
恐竜族以外に展開を広げるということは、ミセラの適用範囲から外れて各種手札誘発の的になる可能性があるわけです。
特に要注意なのが「原始生命態ニビル」で、展開を潰された上に攻撃力3000のモンスターが出現するため、こちらの盤面が大きく縛られてしまいます。
そこでカギになるのが「エヴォルカイザー・ドルカ」。モンスター効果を2回無効にでき、ニビルを止めつつ1妨害残せる優れものです。
ワイバーンより先にドルカを出すには、卵から出すカードはドルカのエクシーズ素材でなければなりません。ゆえにこの時点で、ニビルをケアするなら卵から後続の展開に繋げるのは諦めなければならないのです。
しかし、握っているかもわからないニビルを意識して展開を妥協したくないという考え方もあるかと思います。
そこで続きを見てみます。
最終盤面まで
ラプター効果で卵を破壊して召喚権を追加。
卵効果で☆4を特殊召喚。
ワイバーン(1)の効果でラプターを特殊召喚してラプターを破壊。
ラプター効果でキマイラをサーチ。
ワイバーン(2)の効果でラプターを特殊召喚してワイバーンを破壊。
キマイラを通常召喚。キマイラ効果でラプター特殊召喚。
これが恐竜でもっとも安全な方法を取った場合の最低限の盤面です。先ほどの争点は、ドルカを後回しにすればさらに強固な盤面をつくれたというものです。
それ、必要ですか……?
最強盤面が目標ではない
手札2枚でドルカ、ラギア、アルコンを出して、残りの手札もあわせれば、勝つ上で十分な制圧力になります。
確かに、さらなる展開があればここに「召命の神弓-アポロウーサ」を追加したり、ドルカorラギアの代わりに「ヴァレルロード・S・ドラゴン」を出したりもできますが、リスクを冒してまでやる必要があるかは考えなければなりません。
大事なのは先攻展開ルートを考えることではなく、勝つための道筋を描くことです。
盤面を捲られた上で相手に十分な手札が残るケースは経験上非常にまれなので、返しの強さは制圧力にも勝ります。むしろ、墓地リソースとトップドローだけで逆転できる点こそが恐竜の真骨頂ともいえるでしょう。
ちなみに、墓地ミセラ(4除外)だけでもここまで立て直してLINK-4または進化薬+LINK-3に繋げられます。
そんなわけで、私はミセラを素材にドルカを立てるルートをお勧めしています。
じゃあ次は、ドルカ立てた上でぶん回すのはどうなのよという点について。
ワイバーンの効果で「スクラップ・ゴーレム」、ラプターを素材に「水晶機巧-ハリファイバー」など、ラギア1体出すよりも強い展開は存在します。
しかし、これも結論からいえば私は採用しません。リスクに見合わないからです。
この場合のリスクは言わずもがな、手札事故です。
ハリラドンの強みと弱み
いわゆるハリラドンにおいて特筆すべきは、虹光によって「禁じられた一滴」をブロックできる点です。モンスターを召喚しない限り魔法罠しかコストにできないため、制圧力が格段に上がります。
しかし、繰り返しになりますが、そんなオーバーキルが必要でしょうか。
初手5枚で特定の1枚を引く確率は12.5%もあり、ハリラドンの構成要素は最低2枚、深淵まで出すにはゴーレムが必要で+1枚、さらに九支まで頑張ると計5枚にも及びます。
上記はやや極端な例ですが、要するに事故要因は1枚でも減らしたいわけです。その枠で後攻でもアルコンを通すための戦術を広げた方が、恐竜の強みを活かせると思います。
こちらの展開が通って、しかし相手が捲り札を握っていて、それで盤面捲られて、なおかつこちらのリソースでは返せない確率って、そこまで高くないと思いますよ。
妥協盤面について
ハリラドンのもうひとつの特徴は、ハリファイバーで完結している点です。すなわち、恐竜ギミックなど引かなくともラプターさえあればハリラドンができるということです。
マスターデュエルでは「真竜皇V.F.D.」が現役なので、むしろこの点を評価して採用する方が理にかなっているかと思います。
なお、ラドン不採用の場合のラプターは単体ではランク4になるのみですが、一応ラプター+ミセラというルートが存在します。
妨害の踏みやすさ、妨害の質ともにハリラドンとさほど変わらないので、やはりミセラを引ける確率とチューナーを引いてしまう確率とで比較して検討することになるでしょう。
ミセラ効果でベビケラ特殊召喚。
ワイバーン(1)の効果でキマイラを特殊召喚してキマイラを破壊。
ワイバーン(2)の効果でラプターを特殊召喚してベビケラを破壊。
ベビケラ効果でオヴィ特殊召喚。
オヴィ効果でゴアトルス墓地送り。
ゴアトルス効果で進化薬をサーチして発動。
進化薬を素引きしているなどの理由でゴアトルスを落とす必要がない場合は、進化薬でゴアトルスを出して魔法に厚くした方がよさそうです。
採用枚数の目安
これまでの内容を踏まえてデッキを組んだ場合のイメージを解説します。
基本戦術はいかにミセラを通せるかにかかっているので、できればおろ埋まで入れて確率を上げておきたいです。
一方で、卵はアルゴかアルコンが通らないと腐ってしまうためフル投入まではしなくてよいと思います。パンクラを出せるプチラは最低1枚は入れておきましょう。
また、さらにルートを増やす場合は「ロストワールド」や「ワン・フォー・ワン」の採用も視野です。とはいえ、やや汎用性に欠けるので必須ではありません。
アルゴはミセラで出すのが本命ですが、ミセラを止められたときや2ターン目以降も考慮すると素引きしても悪くないです。
アルコンも、進化薬を腐らせないために2枚を推奨します。ミセラ+卵から墓地の恐竜が3体になるので、初手でも腐りにくいです。
相手の制圧への対策としてお勧めなのはやはり一滴です。ミセラをはじめとして、初動で打てる通常魔法など、コストにできるカードは豊富にあります。
アルゴをコストに「スキルドレイン」を避けることで、プチラや進化薬からパンクラを出せるのもポイントです。
エクストラデッキ
どんな構築においてもほぼ入るカードたち。
アルゴや卵から展開が伸びないときにとりあえず進化薬の発動条件を満たすためのカード。意外と登場率は高めなので優先して採用したいです。
先攻初手以外で出す可能性のある捲り用のカード。ここまでで10枚なので、「金満で謙虚な壺」を採用する場合はアルミラージorランク4のどれかを除いた9枚を残すとよさそうです。
残りはどうせ除外するので割と何でもよいですが、ピンポイントでも永続罠や耐性持ちに干渉できるカードがお勧めです。
アクセスの攻撃力を倍にすることで、アルコン3500+アクセス5300×2+キマイラ1700+デュガレス1200=17000になるので、逆に金謙を打った場合に活躍が期待されるカードです。ただし、ドルカやラギアを出せずアクセスの通りが悪くなる点には注意。
ソリティアではなく、対戦ゲーム
回して満足するだけに留まらず、勝つ計画を立てて綿密に構築を練ることが遊戯王の面白さの肝です。
特にマスターデュエルでは、初手を見た途端にすぐに降参を選ぶプレイヤーも少なくないのが現状です。しかし、展開の先にはプレイヤーそれぞれが試行錯誤の上に導いた結果があるものなので、それを見て研究することも楽しめる方が増えてほしいと思います。
ですから、恐竜を見かけても「壁とやってろ」とか言わないでくださいね。なんて。
以上